日本の中心から美容の力を!~Part2~

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ピンチ! 人が辞めていく……経営者としての成長期

――実際にオープンされて、その後いかがでしたか? 経験された試練などお聞かせください。

まず、人員を採用しても売り上げが上がらない、人が定着しないという問題に頭を抱えましたね。オープンして2カ月で5人採用しましたが、店舗売上がなかなか100万円に到達しないのです。それで、もっとがんばろうと技術トレーニングをすると「ついていけません」といって辞めてしまいました。

この頃、同じくらいの規模の経営者たちが集まる組織・SPC JAPAN(現・SPC GLOBAL)に入会し、経営の勉強を本格的に始めました。そうすると、理美容室の経営者たちも同じように教育と人材の問題で悩んでいるのだということに気づけたんですね。仲間たちと経験をシェアしたり、意見を交換したりしてスタッフとの向き合い方を見直していきました。次に悩んだ時期も、人の問題ですね。5店舗目をオープンしたくらいの時期、20名ほどのスタッフを抱えていたのですが、半分近く辞めてしまったのです。

――それはどうしてだったと思われますか?

今思うと、店の中をきちっと見れていなかったんだろうな。外仕事で店を空けることが多くなった時期なんですよね。今では笑い話にできるようになったけど、最近知り合いから「あのときよく店を閉めていたよね」といわれるんですよ。どういうことかというとね、僕が外仕事に行っているあいだに、スタッフが勝手に店を閉めていたわけ。恥ずかしながら、経営しているつもり、見ているつもりでしたね。とてもショックでしたが“見ているつもり”ではいけない、きちんと職場を管理する必要があるんだということを1つひとつ学んでいきました。

――本来“職人”であった人が、会社の社長になるわけですもんね。改めて経営を見直されたということで、具体的にはどんなことを改善されたのですか?

一言でいうと仕組みづくりですね。店舗が増え、人が20名以上になると、僕が直接管理するのがむずかしくなってくるんですね。管理と教育の仕組みが必要だと気づいたのです。伝票管理などの経理周りのシステムを整え、教育の仕組みを整えました。

教育は力を入れていたつもりなんですけど、シャンプー受かって、ブロー受かってといった昔ならではのカリキュラムでしかありませんでした。教育したその先のステップアップの仕組み、役職やリーダーなど、お店の中を組織化し、役割を明確化しました。

フロント周りの諸業務のリーダー、教育を統括する人、集客・動員の担当など、現場にまつわるすべてのことをスタッフに振り分け、そのリーダーをトップが管理するようにしました。そうやって“お店”から“企業”らしい働く環境に変えていくことで、人が辞めなくなり、店舗展開自体も軌道に乗っていきました。

当時役職者やリーダーとして頑張ってくれたスタッフのうち、3名が今弊社ののれん分けFC店のオーナーとしてがんばってくれています。このピンチを共に乗り切ってくれた仲間には感謝しかありません。

自立した美容師のなるためのすべてが身につくところ

――教育の仕組みのお話を、具体的に聞かせていただけますか。

これは、オープン時からの夢「美容師の働く環境を整えたい」ということの最も根幹にあたる取り組みです。働く環境を整えるとは、支持される美容師として自立できる能力を育てること、そして一生その仕事を続けられる制度を整えること。つまり、教育と給与・キャリア制度を両輪で回せるような仕組みづくりをしました。

まずはやっぱり教育。当時は、先生とお弟子さんの関係で、お店で技術を学んだんですけど、自立するための教育というより、アシスタント用の教育だったんです。

――それはなぜですか?

当時は今よりもっと小規模な個人店ばかりで、早くデビューされてしまうと先生のアシスタントがいなくなってしまうからです。シャンプーやヘアカラー塗布は教えるけれど、カットのベーシックをじっくり教えることはなく、見て盗めという感じで。

また、スタイリストになったところで入客できずに、キャリアを築ける環境が整っているお店が、今より圧倒的に少なかった。なので「きちんとデビューできてキャリアアップできる、会社のような店づくり」が、まず働き方改革の第一歩でした。

――自立するための教育ですね。創業から31年、この地で店を構え続けているということは、今もその風土は受け継がれているんでしょうね。

そうですね。どこよりも自立した美容師力が身につくというのは、MUGEN GROUPの強みだと思っています。たとえば、弊社からのれん分けFCや完全独立も含めて、この30年で20店舗近いスタッフがお店をオープンしてきたのですが、お店を閉めてしまった例は1軒くらいしかないんですよ。もちろん、本人たちが経営をしっかり学んだのもあると思いますが、第一歩目の「自立した美容師」としての技術・思考がないと、何を学んでもうまくいかないと思うんですね。

一番よいのは、すべてのスタッフに弊社でキャリアを全うしてもらって共に幸せになることですが、彼らが「MUGEN以外でも通用する美容師」であることは、これまで30年が間違っていなかったんだという後押しにも感じています。

――現に、30年共に勤めてこられたみなさんと、5ブランド18店舗という実績が、それを証明していますよね。

30年やっていると、やっとみんなと人生を共にしたなという感じがありますね。たとえば、最近女性スタイリストが定年を迎えました。どうしても、美容師の成功事例は独立というイメージがあるし、特に女性は結婚や出産を機にキャリアを中断されると美容師として働き続けづらいと思います。

好きな仕事を一生できる環境づくりが大きな夢だったので、そのロールモデルが生まれたのはうれしいですね。長くやっていると、孫が生まれるスタッフがでてきたり……。そうだ、母娘2代にわたって弊社に入社してくれたスタッフもいます。娘さんが求人に応募してくれたときは「彼女(新入社員の母親)にとって、僕らと美容師として働いたことがしあわせだったんだな」と思いました。

ーーパート3へ続くーー

MUGEN GROUP RECUIT Endless Dream